2012年11月12日月曜日

結局また,購入記録

最近は,年に一回,コンスタントに新しい小品を刊行している高橋葉介先生の今年の新刊が出たのと,名作短編集「夜姫さま」の新装版(表紙書き下ろし,「もののけ草紙」の未刊行短編 2 作)が出ていたので購入.

「ストーリィ・テラー」

高橋葉介先生によるグリム童話の翻案,ということで,その一文だけで,面白さが保証されているようなもの,という感じです.もちろん,グリム童話の翻案と言えば,諸星大二郎先生のマンガがすぐに思い浮かぶわけですが,高橋葉介先生も,そこは強く意識していたとのこと.そのせいであるのか,高橋葉介先生の才の為せる技か,全くの別物というか,いつものエログロナンセンスな高橋葉介節の作品に仕上がっています.近年の作品(新・夢幻紳士三部作以降)の中でもトップクラスの出来だと思います.

先生があとがきで書かれている通り,はじめの二話(「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」)は,元ネタの話を意識するあまり,話の展開がギクシャクしている感がありますが,「ラプンツェル」でラプンツェルを「塔に幽閉される魔物」として描いたあたりは往年の「蜘蛛の化物もの」の翻案にもなっていて調子が出てきていたようにも思います.しかし,「あとがき」にあるように意識的に女性のヌードを入れてエロに走りはじめてからの二作は,また,もとのギクシャクに戻っている感があり,少々,残念です.ただ,この二作に通底するふわふわしたエンディングは,個人的に,嫌いではないです.特に,「ハーメルン」は,元ネタの不可解が上手く表現されていたように思います.また,「眠れる」に関しては,不幸っ娘ナユコちゃんが出ていたというだけで,ファン的には満足です(が,不幸にならなかったのは……).この二作を経て,「シンデレラ」の悲喜劇あたりから,先生の筆が明らかに冴えはじめるのがよくわかります.

今作で,特に気に入ったのは,「白雪姫」「長靴をはいた猫」「7 匹の子やぎ」の三編です.なかでも,「長靴〜」の猫を,ニーハイソックスの靴下(だけを)穿いた猫耳っ娘にしちゃうあたりが素敵でしたw

個人的には,「怪談」の官能的な雰囲気が好きだったので,今の絵柄で,こうも見事に官能ものの連作をやってくれたのがとても嬉しかったです.特に「ヒラメ」での,「お姉ちゃん」が登場するシーン(絵だけではなく「なんだい弟」というセリフ)のもつエロティシズムは,高橋葉介にしか描けないものだと思います.

番外編は,「こういう新シリーズが書かれるといいな」という感じでした.「悪夢交渉人」あたりからの高橋葉介先生のマンガの主人公は,基本的に,魔に対してアクティブすぎて,初期の(まだ,人間だった頃の)夢幻魔実也のような無気力キャラが恋しくなってきた頃合いなので…….

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「夜姫さま」

基本的には,表紙の絵のために購入したので,とくに感想はありません.

久し振りに読み返してみると,「猫姫」が可愛いなぁ,とか,「夜姫」のデザインがツリ目&ジト目っていうのが高橋葉介キャラの中では珍しいなぁ,とか思いました.

「もののけ草紙」の未刊行エピソードについては,この本に収録する意味がちょっとよくわからないくらい,普通の「もののけ草紙」だったとしか…….