2015年9月25日金曜日

すたっぷ

最終的な報告がなされたようなので備忘として記録しておく.しかし,こういう報告が論文誌に(しかも,Nature に)載るという事実が,この事件の傷跡の深さを象徴しているようだ.

この段階にきて,改めて思うのは,結果論から遡る以外に,あの事件をどうやったら未遂に終わらせることができたのか,という点が,今後,重要になってくるのだろう,ということ.今回は,蓋を開けてみたら,あまりにも杜撰な状態が明らかになったから解決の上でよかったようなものの,もし,これが巧妙に仕組まれていたとすると,科学哲学的な意味での性善説のようなものは崩壊していくしかないのかもしれない.

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こうならべると,自分,結構,この関連の記事書いてたんだな…….まぁ,サイエンスの隅っこにいる人間として,この件に関心をもたないとか無理だしな.

2015年9月24日木曜日

「心が叫びたがっているんだ」感想

長井監督(+まろり+田中さん)の最新作.「あの花」のメンバーが再結集という売りなんだけれど,個人的には「とらドラ!」の三人組(「あの花」は嫌いじゃなかったけれど,媚びすぎというか,わかりやすすぎというか,なんとなくダメなところが見え隠れするので).

というわけで,感想(ネタバレ含む,というか,見てないと意味不明かと).

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単純に面白かった.確かに,満点の出来ではないけれど,単に佳作というよりは,良作として評価したいくらいの面白さ.名作ではないんだけれど.

全編を通して,とにかく,長井監督の絵作りが天才的に上手くて,カットの数々を眺めているだけで楽しいとう感じ.長井監督の切るコンテの特徴として,画面の中の人物の配置の取り方が際立つけれど,単純なカメラの動かし方とかも綺麗で,本当に才能を感じる.あと,やっぱり,この人のコンテは,過剰演技気味と言われることもあるけれど,表情豊かな演技をさせるから好き.特に,今作の場合,誰が誰にどういう思いを抱いているのかをセリフよりも絵で,丁寧に,上手く表現できていたところが良かった(順は坂上に顔を赤らめているシーンがあるけれど,坂上が順に顔を赤らめているシーンはほぼない,とか).

ストーリーに関しては,とにかく,「幼い女の子が憧れている山の上のお城がラブホテルでそこから不倫中の父親登場」という強烈なイントロが素晴らしかった.この辺,まろりと長井監督が(たぶん)大好きな「無自覚と無知の生む悪意」そのもので,とても良かった.ストーリー全体は,担任のいう「ミュージカルには奇跡がつきもの」というセリフが象徴するようにありきたりなベタな奇跡に満ちている青春ものなんだけれど,それでいい,という感じ.いや,それでこそ,といったほうがいいかな.とにかく,坂上が順を選ばないラストは,日和らずによく描き切った,と褒めてやりたい(最初から最後まで坂上から順に何かを思っている描写がない.逆に仁藤を気にしてる描写は多い).まろり分が薄くて,もう少し切れ味欲しかったとも思ったけれどw

ストーリーで少し残念なのが,仁藤が良い子で,可愛すぎたところかな,と.彼女は,もっと,暗黒面に落ちて良かったと思う.可愛いし,病み方が優等生すぎた.あと,田崎が三枚目の良いキャラで良かった.最後の告白宣言も田崎のキャラが良かったから,あんまり蛇足感がなかった気がする(ちゃんとファミレスのシーンで好意を抱き始めるきっかけも描かれていたし).恋愛関連も,2 時間の映画でよく詰め込んだ,という感じ(坂上・仁藤に関しては,「以前付き合っていたけど自然消滅した」という言葉で観覧者に想像させる手法だったけれど,順と田崎については丁寧だった).特に,順の恋愛も行動理念も,人との関わりを積極的に断ち続けた結果として,精神的に幼い部分が残酷なまでにエグく描かれているところは,さすがまろり先生.

ネットでは,true tears(アニメ)にストーリーが似ていたみたいな評があるけれど,違うね,と(似ていないとは言わないけれど).作中,坂上は,一度たりとも順に惹かれていないし(ここが重要),そもそも,この話は,順(乃絵に相当)の視点で描かれている.そして,本質的に恋愛が主題ではないところが根本的に違う(今作において,恋愛の方向性は軸がぶれていない,誰が誰に選ばれてどうなるのかは,物語の始めから終わりまでぶれていない).むしろ,"青春の向こう脛" を蹴られて痛くなってしまったのは,恋愛のせいではなくて「卵」に象徴される「言葉にしない」という各人の心の問題で,恋愛がらみのドロドロではない.

ストーリーの類似度で言えば,むしろ,三人組の前作である「あの花」のほうが高くて,「卵(キャラ)」を「めんま(青春のもたらした幻覚)」に置き換えると,ストーリーが「あの花」の主軸と同じことがよくわかる.違うのは,「あの花」では,みんなが「めんま」の存在を認めることで,わだかまりが解消したのに対して,「ここさけ」では「卵」の存在をみんなで否定する(=それは自分の生み出した幻影と認める)ことで,風が通るようになったというところくらいか.

あと,個人的には,「家族愛(笑)」なスタンスが非常によかった.「家族」には「無償の愛」があるとか糞食らえだよね.クソみたいな家族は実在するし,それは,事実として無視してはいけないのだ.ラスト近く,順の母親が順を見直す部分は,ストーリーの都合上仕方がないとはいえ,アレもなくてよかったくらい.絶対的な正義みたいな薄っぺらい「家族愛」しかテーマを作れないクソみたいな無能アニメ映画監督とは大違い.細田のことだけど.

細かいところだと,思春期に特有のダサい空気の作り方は,やっぱり上手いな,と思った.「青春の向こう脛」とか,担任に変なあだ名をつけているところとか,行事を略称(振れ交)で呼んでたりするところとか,ラブホという存在の扱い方とか(=性行為という恋愛のリアルとの距離感の取り方).

まぁ,そんなこんなで,面白かったので,見てない人にはオススメしておきます.少なくとも,「あの花」よりは面白いです.「とらドラ!」には勝てないかもしれないけれど.あれは,ちょっと別格すぎて…….

長井監督に今後も長編アニメを作るためのスポンサーがつきますように.細田なんかに金を出している人は,長井監督に金を出すようになればいいのに.

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やっぱり,好きだったものを褒める文章を書くのは苦手.