2012年2月3日金曜日

かったもの

「ニッケルオデオン・」 道満晴明

道満晴明先生の一般向けショートマンガの単行本第一巻.第一話の "Heart Food" のみ,Comic IKKI のウェブサイトで公開中

全体的な印象は,かつて快楽天で描いていたタイプのショートからエログロ反社会要素を取り除いて,狂気を薄めたうえで,真面目なテイストの作品群だけを抜き出したような作品集という感じです.いつもの道満先生を期待すると薄味過ぎてガッカリするかもしれません.個人的には,道満先生が真面目に描いたショートは嫌いじゃないので,薄くてもいいもんだな,とは思いましたが…….

しかし,この本を読んで理解できたのは,あのほとんど棒人間化しているキャラクター同士の全く抜けない(そもそもそういう目的のものでもない)エロに,作品世界の奥行きを形作るという重要な役割があったのだと言うことです.例えば,道満先生の作品の中でも名作として名高い「トゲトゲ」ですが,地下道の怪物と男の間に肉体関係が結ばれていなかった場合にどれだけ薄っぺらい話になるかを想像してみると,本書の各話の味の薄さ,アッサリさが想像しやすいかと思います(※).いや,それはそれで味わい方次第だと思うのですが,僕は,「性本能と水爆戦」シリーズに戻ってほしいなぁ,と思うわけです.「ぱら☆いぞ」も大好きなんだけれど,やっぱり快楽天ではショートを描いてほしいなぁ,と.「ヴォイニッチホテル」は凄くアクが強いけれど長編だしね.

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※この「薄さ」が端的に現れているのが,「私の友達に虎とつきあっている女の子がいるんだけど,その子が最近虎とキスしたらしいの(うろ覚え)」というセリフ.