2015年4月1日水曜日

結局,文字に戻る

良質なものを享受したいと思うと結局文字に戻るという結論に舞い戻った.

(自分のアイディアを具現化するための一定の才能があるのは前提として)アイディアを形にするときにかかるコストが低ければ,その分野は発展する.アイディアをもつ多くの人はそこに集中するし,コストがかからない分,バックも得やすいから市場も生まれやすい.そういう意味で,歴史的に文学(俳句,短歌,詩,純文学〜大衆文学,ライトノベルまで)が非常に広大なものになるのは当然だし,絵画もまた然り.漫画は,少なくとも日本においては,比較的,バックに対してコストがかからない分野だから,文学ほどではなくとも,やはり広大だ.

消費者を含めて分野が広大になると,バックに合わせた省コストの媒体も作りやすい.需要が少ないジャンルなら,その需要でペイするコストだけをかけて媒体を作ることができる.そうやって,裾野は広がる.

逆に具現化するためのコストが高いのは映像分野だろう.ひとつのアイディアを具現化するのにものすごい数の従事者を必要とする.特に,アニメは最も金がかかる部類の具現化手法だと思う.そういう状況だと,結局,自分のアイディアを具現化するために莫大な金額を簡単に投げ出せる人間(エル・カンターレとか)か,すでに(別分野で)売れている人間のアイディア(マンガ原作,小説原作とか)を持ってくるか,売れることが想定されるアイディア(をもつ人間)か,過去にものすごい儲けた人間(宮崎駿とか)くらいしか,アニメとして具現化するチャンスはないのではないかと思う(それでも,どんなに予防線を張ったところで失敗するものは失敗するし,思いがけないものが成功することも,少ないとはいえある).

コストがかかる限り,手に入りやすい値段でものが売れないから,ただでさえ売り辛いので,需要が多くないジャンルは,そもそも作られることがない.結果として,多様性は生まれにくい.それでも,購買層が十分に大きければ市場は徐々に広がっていくんだろうけれど,特にアニメは,ある程度の潮流を築いたメディアの中では最後発にあたるので,その他の(よりコストが低い)メディアとの需要の奪い合いに,まず,勝てない.勝てない分野は,そもそも売れないわけで,売れないと想定されるものは作られない.作られなければ,(アニメの中では)マイナーな需要を持つ層は,先行分野で需要を満たしてしまうので,アニメに期待をしないし,そもそも,見ることをしない.そんな負のフィードバックがアニメ業界にはある気がする.たぶん,これは気のせいではない.

よって,僕がものすごく好きになるタイプのアニメが売れないことが多い以上,僕は,アニメに期待をしても仕方がないということなので,結局,実写映画に,漫画に,文字に,戻っていくのであった.

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不思議なことは,アニメほどではないけれど,かなりコストがかかる実写映像は,アニメと比較して,はるかに広大な市場を獲得していることだ.実写映像とアニメとで差がついた理由があるとしたら,それはたぶん,最初期にターゲットとした層の質なんじゃないかと思うわけだけど,それはまた別な話.