2010年4月14日水曜日

Bering Strait

ベーリング海峡の閉鎖時期(Early Paleogene)がいまいちわからない.

一般論では,late late Cretaceous から大西洋の拡大(まだ,ヨーロッパと北アメリカは離れていない)と北米大陸とユーラシア大陸の接近が始まっているものの,暁新世の初期では少なくともベーリング海峡は開いていてもいいといえる.一方,同様に一般論では,始新世には完全にヨーロッパと北アメリカは分離し,少なくとも middle Eocene にはベーリング海峡は陸橋として機能していた,といわれている.

僕がここ最近にレヴュウした限りでは,意外とここの閉鎖時期って,いい加減にしか論じられていなくて(まぁ,たとえ開いていたって sill だからね……),古地理図なんかも K/T boundary(大抵開いている)と early/middle Eocene(ほぼ閉じている)はよく描かれているものの,late Paleocene-early Eocene の図というものはほとんど見たことがない.

確かに,最も新しいこの海域近傍の Paleogene のデータを提供している IODP exp. 302 の成果論文を見ていると,PETM 時には Bering strait を開いて古地理図を描いているのだけれど(Sluijs et al. 2006 など),その図の参照元である Brinkhuis et al. (2006) の古地理図(early Eocene)では,Bering を閉じていて,それをもとに Sluijs が図を書き換えた時点でどういう推定があったのかいまいちわからないわけです.

僕のような North Pacific をやる人間にとっては,Pacific と Arctic の間で流れが一切なかったのか,少ないながらも水の交換があったのか(実際,Bering strait は開いていたところで水深が異常に浅いので表層水以外の交換は起こらないのだけれど,表層水が交換すると plankton は流入してくるので),は大きな問題です.

誰か詳しい人,この辺りの地史を解説しているいい論文を知っていたらご教示願います.