2011年12月29日木曜日

けいおん!劇場版の感想・その2

映画「けいおん!」の感想,その2です.記事をわける必要があるほど文章量があるわけではないのですが…….

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「けいおん!」の映画がいかに良かったか,ということは前回の記事でさんざん書いたのですが,これをひとことで表すと

「俺たちの見たかった『けいおん!』は,1 期でも 2 期でもなく,これだったんだよ!」

です.

「いかにもアニメの中にしか存在しない女の子」が "リアルに見えるように仕込まれた(※1)" アニメ特有の世界でゆるゆるとバンド活動をする,という世界観が,「けいおん!」という作品に求められるすべてだったのです.

そういう意味では,TV アニメ本編はあまりにも「描かれるべき姿」が省略されすぎていました.

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この映画では,「天使にふれたよ!」を制作するという裏テーマを,ハイエタスのないフィルムの上で,唯の心情変化を中心に丁寧に描きだしました.特に,その空隙のない時間の中に「ロンドン旅行」というイベントを挟んでも,その道筋がぶれることなくいつもの唯として描ききったのは演出として本当に素晴らしかったと思います.この辺りは前回の記事で書いた通りです.

こういう,「日常」の感覚を「ロンドン旅行」というあまりにもイベンティックな設定の中でも失わなかった監督の演出こそが,この映画の素晴らしさそのものだと思います.このような演出が端的に現れていたのが,監督自身も雑誌のインタビューなどで取り上げている「気付かずに Abby Road を横断する 5 人」のシーンだったといえます.

また,「天使にふれたよ!」の制作において,アニメとして,ほぼはじめて楽曲を作っていく HTT の姿が描かれていました(※2).これもまた,まさに「僕らのみたかった『けいおん!』そのもの」だったといえます.

(ついでに,この楽曲制作シーンで映画冒頭の「光」が後輩のための曲だったという伏線を回収しているところもよく作っているなぁ,と思いました)

さらに,卒業ライヴが描かれたことが本当に良かったです.これについては,アニメ本編でマラソン大会などの間延びした回を入れてまで貴重な尺を潰したり,OP のカットに教室ライヴを使ったりしていたのは,映画で感動的に卒業ライヴをやるためだったのではないか,と邪推してしまうくらい完璧なアニメ本編の補完だったと思います.

特に 2 期では HTT メンバーとクラスメイトの交流が描かれたことや,さわちゃんのはじめての担任クラスということで,モブにファンが付くほどモブがいきいきと描かれていたにも拘らず,卒業が近付くにつれてストーリーが主要メンバーだけに収束していってしまい,消化不良を起こしていたと感じるくらいでしたが,映画で卒業ライブが描かれたことによって,そんなフラストレーションは完全に霧消しました.

卒業ライヴを計画した HTT をさわちゃんが先生をしながら守ろうとする姿,盛り上がるクラスメイト,掘込先生 V.S. さわちゃん,後輩も先生も巻き込んでしまう……「リアルじゃないリアルな青春」のすべてがベタベタに,でも,感動的に描かれていたといえます.けいおんさいこー!

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本編のハイライトはロンドンでのライヴにおける「ごはんはおかず」の

「もういっかい!」からの唯の無理矢理なリフの切り返し→一瞬遅れながらも付いてくるみんなの演奏→唯のアドリブ→「スカイハイ!」

の流れと,

卒業ライヴでの "U&I" での,

唯とにゃんあずのギターユニゾン→やりたい放題→掘込先生もノリノリ

の流れでしょう.

この二つのシーンは本当に素晴らしかったです.

……この 2 曲に比べると,アニメ本編と同じカットが含まれていたラストの「天使にふれたよ!」の演出は「にゃんあずが泣くシーンをみせない」という意図は素敵でしたが,本編以上のものではなかったと思います.まぁ,このシーンは,アニメ本編のハイエタスを補完しきったことを示す終端記号としての意味以上の意味がないのでこれでいいのだと思います.

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この映画中で使われた曲は,演奏シーンがないもの,HTT 以外の曲までを含めると 8 曲ほどありました(もちろん,曲によっては一瞬だけの登場もあり.Love Crisis の曲とか).これ,唯のアドリブとかにゃんあずのギターユニゾンとかが入っているバージョンで CD 化してくれないかなー,と期待しております.

あと,映画で流れなかったブラックフリルの曲も聞いてみたいw

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……面白かったり,良かったりした映画の感想を語ろうとすると,どうしても雑多になってしまいます.つまらなかったり,悪かったりすると,批判的に論理的に語れるんですけれどねw まぁ,批判は素人でもできるを地で行っているのもご愛嬌ということで…….

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※1:リアルであることが重要なのではなくて,観客にリアルであるように錯覚させること.例えば,SF 世界なんかで,「SF 的常識[通常の世界での非常識]」を常識っぽく見せかけるような演出法.

※2:1 期の「冬の日」,2 期の "U&I" など,断片的に描かれていたシーンはあったけれど,曲の発想から試作,編曲課程,詩作課程をしっかり描いたのはほぼはじめて.個人的には,唯と澪で 3 度をどっちが弾くかとか,澪が律のバスドラの拍に文句を付けるとかの喧嘩が起こったりするシーンがあったらベストだったのだけれど,ゆるゆる女子高生バンドというコンセプトには不要だろう.